経営の死命を制するのは値決めです。値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無断階でいくらでもあると言えます。
どれほどの利幅を取ったときに、どれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。その点はまた、お客様にとっても京セラにとっても、共にハッピーである値でなければなりません。
この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行わなければならないのです。
(
『京セラフィロソフィ』サンマーク出版 P444より)
----------
ここだけは解説が35ページもあります。
いかにこの項目が重要だと稲盛さんが考えているかということだと思います。
私自身も、最初に稲盛さんの別の著作でこの「値決めは経営である」という言葉に接した時、「これだ!」と思いました。
私の携わる業務も製造現場なので、コストダウンに関しては常に意識しつつ、一方で営業がそれをどうお客様に伝えて値段を決めているのかという点では情報がほとんどありませんでした。
やがて私も管理職になり、会社の数字もある程度知ることができるようになると、値決めに関する情報がないことに疑問を感じるようになりました。
そもそも現場のコストダウンも、お客様の要望に沿った形で行われなければ、全く無意味です。
しかしそんなことはお構いなく、現場の都合だけで物ごとが進み、営業はそれをそのままお客様に伝える。あるいは営業が、この値段でしか売れないからと現場へ相談もなく値引きをして売る。
こんなことで自分たちが作っているものの価値が本当に伝わるわけがありませんし、やがては価格競争に巻き込まれて利益がどんどん損なわれていきます。
それを理解して、本来の自分たちの価値を見つめなおすために必要なのは、自分自身の意識改革しかなく、リーダーはそのためのメンバーへの教育を日頃から怠らないことしかないと思います。
会社にとって最も大切なのは、人ですから。