大胆さと細心さは相矛盾するものですが、この両極端をあわせもつことによって初めて完全な仕事ができます。
この両極端をあわせもつということは、「<ruby><rb>中庸</rb><rp>(</rp><rt>ちゅうよう</rt><rp>)</rp></ruby>」をいうのではありません。ちょうど<ruby><rb>綾</rb><rp>(</rp><rt>あや</rt><rp>)</rp></ruby>を織りなしている糸のような状態を言います。縦糸が大胆さなら横糸は細心さというように、相反するものが交互に出てきます。大胆さによって仕事をダイナミックに進めることができると同時に、細心さによって失敗を防ぐことができるのです。
大胆さと細心さを最初からあわせもつのは難しいことですが、仕事を通じていろいろな場面で常に心がけることによって、この両極端を兼ね備えることができるようになるのです。
(
『京セラフィロソフィ』サンマーク出版 P210より)
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この項目はとても重要だと稲盛さんは言っています。
経営者の最大の仕事は「決断する」ことでしょう。
決断を下す際には色んな面で悩むけれども、多面的に問題を捉えて決断しているかどうかで、その後の結果に差が出てきます。
だから時には大胆に行動するときもあれば、些細な問題でも慎重になって計画を見直すなど、一見矛盾するようだけれども、状況に応じて判断を変えることが必要だと言います。
しかし、一人の人間がそんなに多面的に問題を判断するのは困難だと思います。
稲盛さん自身、ホンダの本田宗一郎と藤沢武夫、ソニーの井深大と盛田昭夫のコンビがあったから成功したと言っています。
だとしたら、多面的に物事を見極める習慣も大切ですが、それよりも自分とは異なる見方で判断をしてくれる人材を探すことの方が大切な気がします。