企業での技術開発やものづくりには経験則が不可欠です。理論だけではものごとはできません。
たとえばセラミックの場合、原料である粉体を混ぜて成型し、高温で焼けばでき上がるということは、勉強さえすれば誰でも理解できます。ところが、粉体を混ぜるということがどういうことなのかは、実際に自分で手を染めて苦労してやってみないと決してわかりません。液体や気体なら完全な混合ができますが、粉体はどこまで混ぜたら混ざったといえるのか、これは経験則でしかわからない世界です。
この経験則と理論がかみ合ってはじめて、すばらしい技術開発やものづくりができるのです。
(
『京セラフィロソフィ』サンマーク出版 P552より)
----------
経験則を重視する経営というのは、それを蓄積する人を重視しなければ成り立ちません。
そんな時間をかけて人を育てる企業が、景気の後退とともに少なくなってきているように感じます。
と同時に、そういう風潮に便乗して、人をぞんざいに扱う企業も増えている気がします。
そういう企業はしかし、社内に情報や技術のストックがないため、環境が変化すればとたんに窮地に陥ることになります。
そうならないためにも、松下幸之助の「ダム式経営」のように、状況が好転している時期にきちんと余力を蓄えておかなければなりません。
どのように余力を蓄えるかは、その企業と経営者の手腕次第になりますが、最近では「めがね21」という会社のように、「内部留保はせずに社員やお客様に還元する」というユニークな手法もあります。
社員を大切にするからこそ、社員も全力で仕事に取組むという構図は、昔も今も変わっていないはずです。